華やかなフロント業務に、かっこいいベルボーイの制服、週末にはウェディングやパーティーが催され、格式高い料亭やフレンチレストランが季節ごとに新メニューを出す一流ホテル。
しかし、内情は倒産寸前―――!
打開策として元大学教授の新社長が打ち出した案は「従業員 総選挙」だった。
2019年11月に文庫版として発刊された「総選挙ホテル」(桂望実)は、ほんわかとした表紙のイラストとは裏腹に、従業員同士の投票で落選すれば解雇という何ともシビアな改革制度を導入したホテルのお話。
多数のセクションの連携で成り立つ「ホテル」というお仕事の裏事情から、総選挙で新たな職に変わった人々の成長がホロっとさせる働く女性におすすめの一冊であるが、ここではレゼンスタイル流に、ホテルで着用される制服に着目してみたい。
ウェディングの装花をはじめ、ロビーや個室、レストランなどホテル全体のお花を担当するフラワー課に勤務する26歳の小室萌は、総選挙で希望のフラワー課から落選してしまう。
しかも、なぜか当選したのは思ってもみなかったフロント業務。
ホテルの顔ともいえるフロントの制服は、近年「おもてなし」を意識したスタイルが多い。
また、オーソドックスなベスト&スカートのスタイルでも、スカーフやリボンが事務職などで使用されるものより華やかで凝っている。ワンピースにジャケットを羽織るスタイルも人気である。萌はいったいどのタイプの制服を着ているのだろうか。
装花という裏方仕事から、人前に出ることが苦手な萌がさまざまなお客様と接する中で自分の頭で考えて働くということの意味を見つけていく姿にきっと勇気をもらえるだろう。
客室の清掃を担当する43歳の後藤文子は清掃会社からの派遣だ。
「主婦の仕事と一緒よ」という清掃仕事をテキパキとこなし卒なく働いていたが、なぜか立候補していた清掃担当は落選。変わりにウェディング部に当選した。
言葉遣いもままならない文子だが、連続でウェディングの契約を取ってしまう。
持ち前のお節介が評価されることで、初めて仕事をして嬉しいと感じたという文子の気持ちに、忘れていた何かを思い出せそうだ。
ウェディングプランナーといえば、上下黒のパンツスーツスタイルが主流だが、素材や機能などその種類は多岐に渡る。「この人に任せたい」と思えるような一着をまとった文子の颯爽とした姿を想像してみたい。
萌や文子の他にも、本書では新しい職で新しい自分と出会うことになる登場人物が多数登場する。
彼らの共通点は一つ、「自分の適性、良いところを分かっていない」ことだ。それを、総選挙という形で他者から評価してもらうことで、適材適所な場所が見つかる。
こんな思い切った改革なら、ぜひうちの会社でもしてもらいたい。
著者:桂 望実
HP: https://nozomi-katsura.jp/
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